撤去か修繕か?腐食したかまどベンチを巡る大規模修繕委員会の決断

「このベンチ、最後に使ったのはいつだろう?」
大規模修繕工事の検討を進める中で、そんな話題が持ち上がりました。
当マンションの庭に設置されている「かまどベンチ」。普段はベンチとして利用でき、災害時には炊き出し用のかまどになる防災設備です。
しかし、入居以来、実際にかまどとして使われたことは一度もありません。
「かまどベンチ」という名前は聞いたことがあっても、実際にどのような設備なのか知らない住民も少なくありませんでした。
ところが、点検の結果、かまどベンチには腐食が見つかり、このまま放置すると危険な状態であることが判明しました。
撤去するのか、それとも修繕するのか――。
利用実績がほとんどない設備に修繕費をかけるべきなのか、それとも撤去してしまうべきなのか。大規模修繕委員会で議論は大きく分かれました。
今回は、普段あまり注目されない防災設備の修繕をめぐって、管理組合がどのような判断を行ったのかをご紹介します。
- 撤去か修繕か?腐食したかまどベンチ
■ 目次 ■
マンションの庭にある「かまどベンチ」

当マンションの庭には、「かまどベンチ」が設置されています。
「かまどベンチ」とは、防災ベンチとも呼ばれる設備で、普段は住民が腰掛けるベンチとして利用し、災害時には座面を取り外して炊き出し用のかまど(調理設備)として使える仕組みになっています。
マンションを購入した際には、「防災設備の一つとして設置されています。」と説明を受けました。
しかし、入居してから今日まで、実際にかまどとして利用されたことは一度もありません。
普段は子どもたちが遊ぶ庭の片隅にあり、時折ベンチとして利用される程度です。
そのため、多くの住民にとっては「防災設備」というよりも、「昔からそこにあるベンチ」という認識になっていたように思います。
業者から大規模修繕委員会へ提案
今回の大規模修繕工事の事前調査の中で、業者から一つの提案がありました。
「かまどベンチの腐食が進んでおり、このまま放置すると危険ではないか」というものです。
現地を確認すると、金属部分には錆が見られ、木材部分にも経年劣化が進んでいました。見た目だけでなく、実際に強度面でも不安がある状態でした。
普段利用されているベンチですので、もし住民が腰掛けた際に破損すれば事故につながる可能性があります。
これまであまり意識していなかった設備でしたが、改めて点検結果を見ると、「いつか対応しなければならない問題」であることがよく分かりました。
撤去か修繕かで意見が分かれる
大規模修繕委員会では、「撤去するべきか、それとも修繕するべきか」という議論が行われました。
撤去を支持する意見としては、
- 実際にかまどとして利用したことがない
- 今後も利用する機会は少ないのではないか
- 維持管理費用がかかる
- 老朽化設備を減らした方が管理しやすい
といったものがありました。
確かに合理的な考え方です。私自身も、入居以来一度も使ったことがないため、「なくても困らないのでは」と感じた部分がありました。
一方で、
- マンションの防災設備として整備されたもの
- 災害はいつ起きるか分からない
- 撤去してしまうと防災機能が失われる
- マンションの資産価値や防災意識の観点から残す意義がある
という意見もありました。
どちらにも一理があり、簡単には結論が出ませんでした。
こうした議論を進める中で、近年のマンション防災に関する制度改正も無視できない要素となりました。それは、令和7年改正標準管理規約です。
改正後の【コメント】第32条関係⑨には、新たに「防災に関する業務」が管理組合の業務として明記されました。
詳しくは「令和7年改正 マンション標準管理規約の防災業務と管理組合の対策」で解説しています。
これまでも管理組合は防災活動を行っていましたが、改正によってその重要性がより明確になったといえます。
そう考えると、普段は使われていない「かまどベンチ」であっても、防災訓練や災害時の炊き出しなどに活用できる可能性があります。
単なる老朽化したベンチとして見るのではなく、防災設備としてどう評価するかが重要な論点になりました。
今後は防災訓練の一環として、「かまどベンチ」を実際に使用する訓練を行うことも検討できるのではないかと感じました。
最終的に修繕を選択した理由
議論を重ねた結果、最終的には修繕を実施する方向でまとまりました。
最大の理由は、「腐食したまま放置することが最も危険」という点です。
仮に将来的に撤去を検討するとしても、現時点では老朽化した状態を放置するわけにはいきません。
ベンチとして利用する住民がいる以上、安全性を確保する責任があります。また、防災設備としての役割も無視できません。
近年は地震や豪雨など大規模災害が増えており、防災対策の重要性は以前より高まっています。普段は使わなくても、いざという時の備えとして残しておく価値があるという判断になりました。
結果として、必要な補修工事を行い、安全に利用できる状態へ戻すことになりました。
大規模修繕工事の範囲が広がる
もちろん、修繕を行う以上は費用が発生します。
大規模修繕工事は、ただでさえ外壁や防水、鉄部塗装など多くの工事項目があります。その中に新たに「かまどベンチ補修」が加わることになります。
正直なところ、「また工事範囲が増えるのか…」というのが率直な感想でした。大規模修繕では、工事項目が一つ増えるだけでも費用への影響が気になります。
やりたい工事を全て実施できるとは限らず、優先順位を付けながら進めなければなりません。
しかし今回については幸いなことがありました。
調査の結果、当初想定していたほど外壁タイルの劣化が進んでいなかったのです。
補修数量が予想より少なくなったことで、その分の予算を他の必要な工事へ回せる余地が生まれました。
そのおかげで、かまどベンチの修繕も無理なく計画へ組み込むことができました。
かまどベンチは管理組合に必要なのか
今回の議論を通じて改めて考えさせられたのが、「かまどベンチは本当に必要なのか」という点です。
「かまどベンチは必要な設備だ」と考える人もいれば、「利用実績がないなら撤去してもよいのでは」という意見もあります。
そのため、かまどベンチを撤去するのか、それとも修繕して活用するのかは、設備の状態やマンションの防災方針を踏まえて判断することが重要だと感じました。
確かに、防災ベンチは普段ほとんど使われない設備かもしれません。しかし、防災ベンチと管理組合の関係を考えると、災害時の炊き出しや住民の交流拠点として活用できる可能性があります。
一方で、老朽化による安全性や維持管理費用も無視できません。そのため、「かまどベンチ 撤去」か「修繕して活用」かは、設備の状態やマンションの防災方針を踏まえて判断することが重要だと感じました。
「かまどベンチは長年利用実績がなく、維持管理費もかかるため、撤去して通常のベンチに置き換えてはどうかという意見もありました。防災機能より実用性を重視すべきだという考え方です。」
普段使わない設備こそ見直しが必要
今回の件を通じて感じたのは、「普段使わない設備ほど見落とされやすい」ということです。
エレベーターや自動ドアのように毎日利用する設備は、不具合があればすぐ気付きます。
しかし、防災設備のように非常時のために存在するものは、普段意識されることが少なく、劣化にも気付きにくいものです。
だからこそ、大規模修繕のタイミングでしっかり点検し、必要な対応を検討することが重要なのだと改めて感じました。
今回修繕することになったかまどベンチも、普段は何気なく庭に置かれているだけの存在です。しかし、災害時には住民の助けになる可能性があります。
「一度も使ったことがないから不要」と考えるのではなく、「使う日が来ないことを願いつつ、万一に備える」という防災の考え方も大切なのかもしれません。
大規模修繕工事では外壁や屋上防水に目が向きがちですが、こうした防災設備にも目を向ける良い機会になったと感じています。
皆さんのマンションにも、普段はほとんど使われていない防災設備はありませんか。
防災倉庫、マンホールトイレ、防災ベンチ、非常用発電設備などは、存在していても実際に使われたことがないケースが少なくありません。
しかし、本当に必要になるのは「使わないで済んでいた日常」が失われたときです。
今回のかまどベンチの修繕を通じて、設備の老朽化だけでなく、防災について考える良い機会になりました。
マンションには、設置された当時は必要とされたものの、年月の経過とともに存在意義が見えにくくなる設備があります。
しかし、大規模修繕はそうした設備を見直す絶好の機会でもあります。今回のかまどベンチのように、「残すか、撤去するか」だけでなく、「どう活用するか」という視点で考えることも大切ではないでしょうか。
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