マンション組合員名簿の未更新が危険!法改正に伴う管理組合の対応策は?

「組合員名簿はあります。だから大丈夫――。」
もし、そう考えているなら要注意です。令和7年改正のマンション標準管理規約では、新たに「組合員名簿等の作成、保管」が明文化されました。しかし本当に重要なのは、“作成したか”ではありません。
実際のマンションでは、「所有者が変わっていた」「賃貸入居者を把握していなかった」「緊急連絡先が古いままだった」というケースが珍しくありません。
災害、漏水事故、孤独死、管理費滞納――。そのとき、連絡が取れなければ管理組合は機能停止に陥ります。
今回の改正は、単なる名簿管理の話ではありません。これからのマンション管理の“生命線”ともいえる重要改正なのです。
- マンション組合員名簿の未更新が危険!
■ 目次 ■
なぜ“名簿更新”が義務化されたのか

令和7年改正のマンション標準管理規約では、「組合員名簿等の作成、保管」が追加されました。
(ア) 電磁的方法が利用可能ではない場合(組合員名簿等の作成、保管)
第31条の2 理事長は、組合員名簿及び居住者名簿(以下「組合員名簿等」という。)を作成して保管し、組合員の相当の理由を付した書面による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。
2 理事長は、前項の規定により閲覧の対象とされる組合員名簿等に関する情報については、組合員の相当の理由を付した書面による請求に基づき、当該請求をした者が求める情報を記入した書面を交付することができる。この場合において、理事長は、交付の相手方にその費用を負担させることができる。
3 理事長は、第19条第3項又は前条の届出があった場合に、遅滞なく組合員名簿等を更新しなければならない。
4 理事長は、毎年1回以上、組合員名簿等の内容の確認をしなければならない。(イ)電磁的方法が利用可能な場合(組合員名簿等の作成、保管)
第31条の2 理事長は、組合員名簿及び居住者名簿(以下「組合員名簿等」という。)を、書面又は電磁的記録により作成して保管し、組合員の相当の理由を付した書面又は電磁的方法による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。
2 理事長は、前項の規定により閲覧の対象とされる組合員名簿等に関する情報については、組合員の相当の理由を付した書面又は電磁的方法による請求に基づき、当該請求をした者が求める情報を記入した書面を交付し、又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、理事長は、交付の相手方にその費用を負担させることができる。
3 電磁的記録により作成された組合員名簿等の閲覧については、第49条第5項に定める議事録の閲覧及び提供に関する規定を準用する。
4 理事長は、第19条第3項又は前条の届出があった場合に、遅滞なく組合員名簿等を更新しなければならない。
5 理事長は、毎年1回以上、組合員名簿等の内容の確認をしなければならない。
これまで多くのマンションでは、区分所有者名簿や居住者情報を独自に管理していました。しかし、実際には「古い情報のまま放置されている」「賃貸入居者が把握できていない」「相続後も名義変更されていない」といった問題が全国で発生していました。
特に近年は、
- 所有者不明住戸
- 海外居住オーナーの増加
- 高齢化による緊急連絡不能
- 災害時の安否確認困難
- 管理費滞納者との連絡不能
など、マンション管理の現場で“誰が所有者なのか分からない問題”が深刻化しています。
さらに、「国内管理人制度」も導入され、管理組合が区分所有者情報を適切に把握する重要性が高まりました。
つまり、第31条の2は単なる名簿作成義務ではなく、「マンション管理の基盤整備」を目的として追加された条文なのです。
「作成して終わり」では意味がない理由
実は、多くのマンションでは既に「組合員名簿」は存在しています。
しかし問題は、“更新されていない”ことです。
例えば、
- 売却後も旧所有者のまま
- 賃貸化されたのに居住者不明
- 緊急連絡先が10年前のまま
- 法人所有なのに担当者不明
- 相続発生後に連絡不能
こうしたケースは珍しくありません。今回の改正では、第31条の2第4項・第5項により、「遅滞なく更新」「毎年1回以上確認」まで明記されました。
つまり国は、「名簿は生きた情報として管理しなさい」と明確に示したのです。
災害、漏水、孤独死、事故、管理費滞納など、マンションでは“緊急時対応”が増えています。そのとき、連絡先が機能しなければ、管理組合は対応不能になります。
管理組合として何をすべきか
管理組合として重要なのは、「名簿整備を継続業務にすること」です。
単に理事長個人が保管するだけでは不十分です。最低限、以下を整理する必要があります。
- 区分所有者名
- 住所
- 連絡先
- 緊急連絡先
- 居住者情報
- 賃貸入居の有無
- 国内管理人情報
- 法人担当者情報
特に重要なのは、「居住者名簿」です。実際に住んでいる人を把握していなければ、防災対応や事故対応ができません。
標準管理規約では、第31条の2で「組合員名簿」と「居住者名簿」を分けて規定しています。つまり、“所有者だけ把握していればよい”という考え方ではないのです。
個人情報管理で注意すべきポイント
名簿整備で最も注意すべきなのは、個人情報漏えいです。
閲覧請求があれば、無条件で全情報を開示してよいわけではありません。条文には「相当の理由を付した請求」とあります。つまり、
- 目的が不明
- 営業目的
- 嫌がらせ目的
- 不要な個人情報取得
などの場合には、慎重な判断が必要です。また、閲覧方法も重要です。
例えば、
- 管理事務室でのみ閲覧
- 写真撮影禁止
- コピー制限
- 閲覧記録を残す
などのルール整備も必要になります。
電磁的方法で保管する場合は、
- アクセス権限管理
- パスワード管理
- クラウド保管ルール
- USB持ち出し禁止
など、情報セキュリティ対策も欠かせません。
管理会社には何を依頼すべきか
実務上、多くのマンションでは管理会社が名簿管理を補助します。しかし、「管理会社がやっているはず」で終わるのは危険です。
管理組合として、次の点を明確に確認すべきです。
- どの情報を管理しているか
- 更新頻度
- 年1回確認方法
- 退去時処理
- 賃貸化時対応
- データ保管方法
- 閲覧請求時対応
- 漏えい防止策
特に重要なのは、「誰が更新責任者なのか」です。担当者任せになると、引継ぎ漏れで情報が古くなります。
また、管理委託契約に「組合員名簿等管理業務」が含まれているかも確認が必要です。
理事長が必ず確認すべきポイント
今回の条文では、「理事長」が主体として規定されています。つまり、最終責任は理事長にあります。
理事長として確認すべきなのは、「本当に最新情報になっているか」です。
例えば、
- 長期空室住戸はないか
- 連絡不能住戸はないか
- 外国居住所有者は把握できているか
- 高齢単身者情報は整理されているか
- 緊急時連絡先は有効か
を定期的に確認する必要があります。
特に災害時には、名簿が“命を守る情報”になります。防災、漏水事故、孤独死対応、修繕工事、防犯対策――。
あなたのマンションは大丈夫ですか?
- 10年以上更新されていない名簿はありませんか?
- 緊急連絡先が古いままではありませんか?
- 賃貸入居者を把握できていますか?
もし一つでも不安があるなら、今回の改正は“他人事”ではありません。
これからのマンション管理では、「組合員名簿等の整備」は単なる事務作業ではありません。管理組合の安全性と継続性を支える、極めて重要な管理業務になっていくのです。
“誰が住み、誰が所有しているのか”を把握すること――。それが、これからのマンション管理の第一歩になるのかもしれません。
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