管理業者管理者方式の契約書ひな型は?報酬・利益相反・重要事項説明を解説

「管理業者管理者方式を導入したいけれど、契約書のひな型はある?」「管理委託契約書と管理者事務委託契約書は別なの?」「管理会社が管理者を兼ねると、利益相反は大丈夫?」「管理者報酬はいくらにすればいい?」と悩んでいませんか。
管理業者管理者方式は、理事のなり手不足や役員の負担軽減につながる一方、管理業者が「管理会社」と「管理者」の両方を担うため、通常の管理方式以上に契約内容とチェック体制が重要になります。
特に、管理業者自身や関連会社が修繕工事などを受注する場合には、利益相反が生じる可能性があります。誰が契約を承認するのか、相見積もりを取得するのか、管理組合にどこまで情報を開示するのかを事前に決めておく必要があります。
国土交通省は令和7年12月に「マンション標準管理者事務委託契約書」を策定し、令和8年4月1日には「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」を改訂しました。改訂では、管理業者管理者方式の導入プロセスや利益相反取引などについて整理されています。
この記事では、管理業者管理者方式の契約書のひな型、管理委託費と管理者報酬、重要事項説明、利益相反対策、契約期間、更新・解除条件まで、管理組合が契約前に確認したいポイントを分かりやすく解説します。
~ この記事で分かること ~
- 契約書のひな型
- 管理者報酬の決め方
- 利益相反の防止策
- 重要事項説明のポイント
- 更新・解除条件
■ 目次 ■
管理業者管理者方式とは?契約書が重要な理由

管理業者管理者方式とは、マンションの管理業者が管理組合の管理者にも就任する方式です。
一般的なマンションでは、区分所有者から選ばれた理事長などが管理者となり、管理会社は管理事務を受託します。
一方、管理業者管理者方式では、管理業者が管理事務を行うだけでなく、管理者として管理組合の業務を担います。
役員のなり手不足を解消できる可能性がある反面、管理業者が自ら管理者として意思決定を行うため、利益相反や管理組合による監視機能が重要になります。
そのため、「管理会社に全部任せる契約書」にするのではなく、管理組合の利益を守るためのルールを契約書や管理規約に明確にしておくことが大切です。
管理業者管理者方式で最新の事故・トラブル事例は?
「管理業者管理者方式で最近、大きな事故や不正が起きているのでは?」と心配する人もいるでしょう。
2026年8月30日時点で、国土交通省が「管理業者管理者方式における重大事故」として特定の事故を公表している状況は確認できません。
ただし、事故が公表されていないことと、リスクがないことは別問題です。
国土交通省は、管理業者管理者方式について、利益相反取引などの適正な運営を確保する必要があるとして、2026年4月1日にガイドラインを改訂しています。
特に注意したいのが、管理業者自身や関連会社が工事などを受注するケースです。
例えば、管理業者が管理者として修繕工事の発注先を決定し、その工事を自社やグループ会社が受注すれば、「管理組合にとって本当に最も有利な契約なのか」という問題が生じます。
だからこそ、契約書には利益相反取引が発生した場合の手続きを明確に定めておく必要があります。
管理業者管理者方式の契約書にひな型はある?
結論からいうと、国土交通省が公式のひな型を策定しています。
令和7年12月には、管理業者管理者方式に対応する「マンション標準管理者事務委託契約書」が策定されました。
さらに、管理業者管理者方式に対応した「マンション標準管理委託契約書」も策定・改正されています。国土交通省は、これらを踏まえて2026年4月に外部管理者方式等に関するガイドラインを改訂しました。
したがって、管理組合が契約書を作成するときは、国土交通省の標準契約書をベースに検討するとよいでしょう。
ただし、標準契約書をそのまま使用すればよいとは限りません。マンションの規模、管理方式、管理者の権限、報酬、修繕工事の発注方法などに応じて、具体的なルールを確認することが重要です。
管理業者管理者方式の契約書に盛り込みたい項目
- 管理者の氏名・資格・権限
- 管理者事務の内容
- 管理委託業務の内容
- 管理者事務の報酬
- 管理委託費
- 臨時業務の報酬
- 再委託の範囲
- 利益相反取引の手続き
- 通帳・印鑑等の保管方法
- 契約期間
- 契約更新の方法
- 中途解除の条件
- 管理者解任時の対応
- 契約終了時の引継ぎ
特に重要なのは、「管理会社として行う業務」と「管理者として行う業務」を明確に区別することです。
管理業者管理者方式は理事会・総会をどう進める?
管理業者管理者方式を導入する場合、いきなり総会議案を提出するのではなく、区分所有者が制度を理解できるように準備することが重要です。
導入までの基本的な流れ
- 管理業者管理者方式を導入する理由を整理する
- 現在の管理方式とのメリット・デメリットを比較する
- 候補となる管理業者から提案書を取得する
- 管理者事務委託契約書案を確認する
- 管理委託契約書案を確認する
- 管理者報酬・管理委託費を比較する
- 利益相反取引への対応を確認する
- 区分所有者への説明会を開催する
- 理事会で導入案を検討する
- 必要な管理規約の変更案を作成する
- 総会で議案を審議する
- 承認後に契約を締結する
国土交通省の2026年4月改訂ガイドラインでも、既存マンション・新築マンションにおける管理業者管理者方式の導入プロセスが整理されています。
特に確認したいのは、管理者の選任・解任、権限、任期、報酬、利益相反取引、契約解除です。
管理者報酬と管理委託費は契約書にどう記載する?
管理業者管理者方式では管理者としての報酬と管理会社としての管理委託費を明確に分けることが重要です。
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| 管理委託費 | 月額○○万円 |
| 管理者事務報酬 | 月額○○万円 |
| 臨時業務 | 1件○○円 |
| 別途費用 | 実費または事前承認制 |
| 報酬改定 | 改定理由・協議方法を明記 |
| 支払時期 | 毎月○日まで |
例えば、「管理委託費月額○○万円」の中に管理者としての業務まで含めてしまうと、区分所有者から見て何にいくら支払っているのか分かりにくくなります。
管理者事務報酬については、どの業務の対価なのかまで確認しておきましょう。
管理会社を兼ねる場合の利益相反は契約書でどう定める?
管理業者管理者方式で最も重要な論点の一つが、管理者である管理業者と管理組合との利益相反です。
例えば、管理業者が管理組合の管理者を務めながら、自社や関連会社に清掃、設備点検、修繕工事などを発注する場合があります。
このような取引では、「管理組合にとって本当に有利な条件なのか」を第三者的な視点でチェックできる仕組みが必要です。
契約書で定めたい利益相反対策
- 管理業者自身との取引を原則として事前承認制にする
- 親会社・子会社・関連会社との取引も対象にする
- 一定額以上の工事では相見積もりを取得する
- 見積書・契約条件・選定理由を管理組合へ開示する
- 利益相反の有無を総会等で説明する
- 管理者自身が利害関係を持つ議案への関与を制限する
- 緊急時には事後報告を認めるなど例外を設ける
- 不適切な取引があった場合の解除・解任条件を定める
国土交通省も2026年4月のガイドライン改訂で、管理業者管理者方式における利益相反取引等に係るプロセスを整理しています。
関連会社との取引も契約書の対象にする
管理業者自身が工事を受注しなければ問題ないとは限りません。
例えば、管理業者の子会社や関連会社に工事を発注するケースでも、管理業者と受注会社との関係によっては利益相反が問題となる可能性があります。
そのため契約書では、単に「管理業者との取引」とするのではなく、親会社、子会社、関連会社その他の密接な関係を有する者との取引についてもルールを設けることが考えられます。
利益相反取引の契約書記載例
項目規定の考え方対象取引管理業者・親会社・子会社・関連会社等との取引事前承認一定額以上の取引は事前承認制相見積もり一定額以上の工事等は複数業者から見積もりを取得情報開示相手方・金額・契約内容・関係性を開示緊急対応緊急修繕は事後報告を認める記録保存見積書・選定理由・契約書等を保存違反時契約解除・管理者解任等の対象とする。
「利益相反取引は適切に処理する」とだけ記載するよりも、誰が、いつ、どの資料を確認し、どの金額から承認が必要なのかまで具体的に定めた方が、実効性のあるルールになります。
管理業者管理者方式の契約締結前に重要事項説明は必要?
管理委託契約については、マンション管理適正化法に基づく重要事項説明が重要になります。
マンション管理業者が管理組合から管理事務の委託を受ける契約を締結しようとするときは、一定の場合を除き、重要事項を記載した書面を交付し、管理業務主任者による説明を行う制度があります。
さらに、管理業者管理者方式に対応した「重要事項説明書様式(管理者受託契約)」も公表されています。
そのため、契約書への署名だけを急ぐのではなく、契約締結前に報酬、業務範囲、契約期間、解除条件、利益相反取引などを確認することが大切です。
管理業者管理者方式の契約期間・更新・解除条件は?
契約期間は、管理業者に任せきりにならないよう、管理組合が定期的に業務内容を評価できる仕組みにすることが重要です。
例えば、1年間の契約期間を設定し、期間満了前に管理業者の業務を評価して、更新の可否を判断する方法があります。
契約書に記載したい更新・解除条件
- 契約開始日・終了日
- 更新の方法
- 更新前の業務評価
- 報酬改定の手続き
- 中途解除の条件
- 重大な契約違反時の解除
- 管理者解任時の契約終了
- 契約終了後の引継ぎ方法
特に重要なのが、管理者の解任と管理者事務委託契約の終了をどう連動させるかです。
「管理者を変更したのに契約だけ残ってしまう」「契約を終了したのに通帳や書類の引渡しが進まない」といった事態を避けるため、契約終了時の引継ぎまで具体的に定めておきましょう。
管理業者管理者方式の契約書でチェックしたい5項目
契約書に署名する前に、少なくとも次の5項目を確認しましょう。
- 管理者の権限が広すぎないか
- 管理者報酬と管理委託費が明確に区分されているか
- 利益相反取引のチェック方法が決まっているか
- 管理者の解任・契約解除ができる仕組みになっているか
- 契約終了後の引継ぎまで規定されているか
管理業者管理者方式は「任せる」より「チェック」が重要
管理業者管理者方式は、役員のなり手不足や理事会運営の負担を軽減できる可能性があります。
一方で、管理会社と管理者が同一になることで、管理組合から見たチェック機能が弱くなるおそれがあります。
そのため、「管理会社を信頼して全部任せる」という考え方ではなく、管理業者が適切に管理しているかを管理組合がチェックできる仕組みを契約書に組み込むことが重要です。
特に、管理者報酬、管理委託費、修繕工事、関連会社との取引、契約更新、解任・解除については、総会で説明できるレベルまで明確にしておきたいところです。
管理業者管理者方式を導入するかどうかを検討する際は、国土交通省の標準契約書やガイドラインを確認しながら、自分のマンションに合った管理規約・契約内容を整えることが大切です。
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