カスハラ対策の目的は?マンション管理会社への指示は誰が?令和7年改正で変わったルールを解説

「管理会社に言っておきました。」
マンションでよく耳にする言葉ですが、実はその一言が思わぬトラブルの原因になることがあります。
令和7年改正のマンション標準管理委託契約書では、管理会社への指示を出せる人を理事長などに限定する規定が新たに明確化されました。
結論として、管理会社への正式な業務指示は、理事長など管理組合が指定した者だけが行います。
区分所有者は不具合報告や要望はできますが、工事発注やルール変更などを直接指示することはできません。
背景にあるのは、一部の住民による過度な要求や、管理会社の現場を混乱させる“指示の乱立”です。
では、区分所有者は管理会社に何も言えなくなるのでしょうか。共用部の不具合を見つけた場合や、マンション管理に対する要望がある場合はどうすればよいのでしょうか。
この記事では、第8条「管理事務の指示」の意味や改正の背景、住民が取るべき正しい手順について分かりやすく解説します。
~ この記事で分かること ~
- 第8条「管理事務の指示」の意味
- 改正でルールが明確化された背景
- 管理会社へ指示できる人の範囲
- 区分所有者が要望を伝える方法
- 正式な指示と相談・要望の違い
■ 目次 ■
管理会社へ指示できる人とは?第8条の意味を分かりやすく解説

マンション標準管理委託契約書の令和7年改正版では、第8条「管理事務の指示」に関する規定が新たに注目されています。
コメント8では、「管理組合が管理業者に対して管理事務に関する指示を行う場合には、管理組合が指定した者以外から行わないことを定めたものである」と説明されています。
一見すると難しい文章ですが、簡単に言えば「管理会社への正式な指示は、管理組合が指定した人だけが行う」というルールです。
なぜこのような規定が設けられたのでしょうか。また、一般の区分所有者はどのように要望を伝えればよいのでしょうか。
今回は、第8条の意味や改正の背景、住民が気を付けるべきポイントについて解説します。
管理会社への指示は誰でもできるわけではない
マンションでは理事長や理事だけでなく、多くの区分所有者が暮らしています。
もし住民全員が自由に管理会社へ業務指示を出せると、現場は大混乱になります。
例えば、
- 植栽を撤去してほしい
- 防犯カメラを増設してほしい
- 清掃回数を増やしてほしい
- 駐車場の運用ルールを変更してほしい
- 掲示物の内容変更を命じる
- 管理員の勤務方法を変更させる
- 修繕工事の発注を指示する
- 管理費の請求方法変更を求める
といった要望が、それぞれ別の住民から直接管理会社へ伝えられた場合、管理会社はどの指示を優先すればよいのか判断できません。
管理会社が受託しているのは管理組合との契約に基づく業務です。
そのため、管理組合として正式に意思決定した内容を、管理組合が指定した窓口から伝える必要があります。
これが第8条の趣旨です。
カスハラ対策で第8条が改正された背景とは
今回の改正でこの規定が明確化された大きな理由は、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策です。
近年、管理員やフロント担当者に対して、一部の住民が過度な要求や長時間の苦情を繰り返すケースが問題となっています。
例えば、
- 「今すぐ工事を手配しろ」
- 「私の言う通りに規約を変えろ」
- 「理事会を通さず対応しろ」
といった要求です。
しかし、管理会社には管理組合の意思決定を無視して独断で対応する権限はありません。
そのため、管理会社の担当者が住民ごとに異なる指示を受けると、大きなトラブルにつながります。
今回の改正では、管理会社への正式な指示系統を明確化することで、現場の混乱やカスタマーハラスメントを未然に防止しようとしています。
理事長だけ?管理会社へ指示できる人とは
一般的には、次のような人が想定されます。
- 理事長
- 副理事長
- 管理者
- 理事会で指定された理事
管理組合ごとに指定する人は異なります。
コメント8では、管理組合と管理会社がお互いに書面で通知することが望ましいとされています。
つまり、「誰が正式な窓口なのか」をあらかじめ明確にしておくことが推奨されているのです。
第8条関係のコメントでは、次のように説明されています。
第8条関係コメント
① 本条は、カスタマーハラスメントを未然に防止する観点から、管理組合が管理業者に対して管理事務に関する指示を行う場合には、管理組合が指定した者以外から行わないことを定めたものであるが、組合員等が管理業者の使用人その他の従業者(以下「使用人等」という。)に対して行う情報の伝達、相談や要望(管理業者がカスタマーセンター等を設置している場合に行うものを含む。)を妨げるものではない。また、「法令の定め」とは、建物の区分所有等に関する法律(昭和37年法律第69号。以下「区分所有法」という。)第34条第3項に規定する集会の招集請求などが想定される。なお「管理者等」とは、適正化法第2条第4号に定める管理者等をいう。
区分所有者は管理会社に要望や苦情を伝えられるのか
はい。区分所有者は管理会社へ不具合報告や相談、要望、苦情を伝えることができます。
コメント8でも、「情報の伝達、相談や要望を妨げるものではない」と明記されています。
例えば、
- 共用灯が切れている
- エレベーターに異常がある
- 漏水が発生している
- 不審者を見かけた
- 清掃状況が悪い
といった連絡は、これまで通り管理員や管理会社へ伝えることができます。
また、
- 駐輪場を増設してほしい
- 宅配ボックスを追加してほしい
- ペットルールを見直してほしい
といった要望を伝えることも可能です。
ただし、これらはあくまで「相談」や「要望」です。管理会社に対する正式な業務指示とは異なります。
指定された者以外が指示したい場合の手順
もし区分所有者が管理事務に関する提案や改善要望を持っている場合は、次の手順を踏むのが適切です。
まず、管理会社や管理員に相談・要望として伝えます。
その後、必要に応じて理事会へ報告してもらいます。
あるいは、自ら理事会へ意見書や要望書を提出します。
理事会で内容を検討し、必要と判断されれば理事会決議や総会決議を経て正式な方針が決定されます。
その後、理事長など指定された者が管理会社へ正式な指示を出します。
つまり、「区分所有者 → 理事会 → 指定された者 → 管理会社」という流れになります。
そのためには、あらかじめ区分所有者が理事会へ要望を届けるルール(仕組み)づくりが必要です。
過去記事「マンションへ要望書の書き方で効果的なのは」では、要望書を管理組合に提出する際に必要な項目について綴っています。
要望を口頭で伝えるだけでは理事会へ正確に伝わらない場合があります。改善提案や設備増設などを求める場合は、書面による要望書の提出が効果的です。
私自身が理事長を経験した中でも、書面で提出された要望は理事会で正式に議論しやすい傾向がありました。
指定した者以外からの指示に該当する例
次のような行為は、本来の手続きを経ていない指示とみなされる可能性があります。
- 管理員に清掃方法の変更を命じる
- フロント担当者に工事発注を依頼する
- 警備員へ独自ルールを指示する
- 理事会決議前に業者手配を要求する
- 管理会社へ「理事会を通さず実施してほしい」と依頼する
これらは個人の意見として伝えることはできますが、管理組合としての正式な指示にはなりません。
管理組合として住民に呼びかけたいこと
管理会社は管理組合の重要なパートナーです。
住民の皆さまからの相談や要望は大切な情報ですが、管理会社への正式な業務指示は、管理組合が指定した窓口を通じて行うルールとなっています。
設備不良や異常を発見した際は遠慮なく管理会社へ連絡してください。一方で、工事発注や運用変更など管理組合全体に関わる事項については、理事会や理事長を通じて検討することが大切です。
適切な手順を守ることで、管理会社との連携が円滑になり、マンション全体の管理品質向上につながります。
住民一人ひとりがルールを理解し、管理組合・管理会社・区分所有者が協力しながら、より良いマンション運営を目指していきましょう。
管理会社への指示ルールが変わっても住民の権利は変わらない
第8条の改正は、区分所有者の発言を制限するためのものではありません。
共用部分の不具合報告や管理改善の提案は、これまで通り行うことができます。
改正の目的は、管理会社への正式な指示系統を明確にし、管理現場の混乱やカスタマーハラスメントを防止することです。
区分所有者の意見は理事会を通じて管理組合の意思決定に反映されます。
よくある質問
よくある質問です。
区分所有者は管理会社へ苦情を言えますか
→はい。相談や苦情、不具合報告は可能です。ただし、管理組合としての正式な業務指示はできません。
理事でも管理会社へ自由に指示できますか
→できません。管理組合が指定した者に限られます。
管理員へ直接依頼してもよいですか
→簡単な相談や不具合報告は問題ありませんが、工事発注や運営変更を指示することはできません。
管理会社は区分所有者の指示に従わなければならないですか
→いいえ。管理会社が従うのは管理組合の正式な意思決定に基づく指示です。
カスハラと判断されるのはどのような行為ですか
→長時間の拘束、暴言、理不尽な要求、権限を超えた対応の強要などが該当する可能性があります。
まとめ
令和7年改正の標準管理委託契約書では、カスタマーハラスメント防止と指示系統の明確化を目的として、管理会社へ正式な指示を出せる人が限定されました。
区分所有者は不具合報告や要望を伝えることはできますが、工事発注や運営方針の変更を直接指示することはできません。
マンション管理を円滑に進めるためには、理事会や理事長を通じた適切な手続きを理解し、管理組合・管理会社・区分所有者がそれぞれの役割を尊重することが大切です。
特に理事長や理事を務めている方は、自分のマンションで誰が管理会社への窓口になっているのか、一度確認してみることをおすすめします。
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