所有者がいても放置?第67条の5「管理不全専有部分管理命令」とは

「所有者は分かっているのに、誰も対応してくれない――。」
そんな“厄介な住戸”に頭を悩ませる管理組合は少なくありません。
ゴミ屋敷化した住戸、長年放置された空室、繰り返される漏水トラブル。注意文を送っても改善されず、理事会としても打つ手がないと感じた経験はないでしょうか。
こうした問題に対応するため、令和7年改正標準管理規約では新たに「管理不全専有部分管理命令」に関する第67条の5が追加されました。
これは、所有者がいるにもかかわらず適切な管理が行われていない住戸に対し、裁判所が管理人を選任できる画期的な制度です。
しかし、「所在等不明区分所有者制度と何が違うのか」「管理組合はどのような手続きを取ればよいのか」と疑問を持つ方も多いでしょう。
第67条の5が新設されたことで、管理組合は「所有者がいるのに何も対応してくれない」という問題住戸に対し、一定の法的対応が可能になりました。
ただし、管理組合が自由に住戸へ立ち入れるわけではありません。裁判所の関与のもとで管理人を選任し、必要な管理や修繕を行う仕組みです。
この記事では、第67条の5が新設された背景から、実務上のポイント、管理組合が注意すべき点まで分かりやすく解説します。
- 管理されない住戸「管理不全専有部分管理命令」の活用
■ 目次 ■
管理不全専有部分管理命令をわかりやすく解説

「隣の部屋がゴミ屋敷になっている。」
「漏水が発生しているのに所有者が対応してくれない。」
「長年放置された住戸がマンション全体の資産価値を下げている。」
こうした問題に悩む管理組合は少なくありません。
令和7年改正標準管理規約では、新たに「第67条の5(管理不全専有部分管理命令)」が追加されました。
(管理不全専有部分管理命令)
第67条の5 理事長は、区分所有者による管理が適切に行われていない専有部分について、理事会の決議を経て、裁判所に対し、区分所有法第46条の8に基づく管理不全専有部分管理命令を求める請求をすることができる。
【コメント】第67条の4及び第67 条の5関係
① 第67条の4に規定する「所有者不明専有部分管理命令」及び第67条の5に規定する「管理不全専有部分管理命令」は、いずれも令和7年の区分所有法改正で創設されたマンションに特化した財産管理制度であり、この標準管理規約においては、同一の敷地・建物を共有する利害関係人として、管理組合が両制度を活用するに当たっての手続規定を設けている。
これは、管理不全状態にある専有部分について、裁判所が選任した管理人に管理を任せることができる制度です。
「所在不明者対策と何が違うのか」「管理組合は何をすればよいのか」と疑問を持つ方も多いでしょう。
区分所有法第46条の8との関係
管理不全専有部分管理命令は、令和7年改正区分所有法で新設された区分所有法第46条の8を根拠とする制度です。
第46条の8(管理不全専有部分管理命令)
裁判所は、区分所有者による専有部分の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該専有部分を対象として、第3項に規定する管理不全専有部分管理人による管理を命ずる処分(以下「管理不全専有部分管理命令」という。)をすることができる。
標準管理規約第67条の5は、この制度を管理組合が活用する際の手続きを定めた規定であり、理事長が理事会決議を経て裁判所へ申立てを行うことができます。
第67条の5(管理不全専有部分管理命令)の概要
管理不全専有部分管理命令とは、区分所有者が適切な管理を行わず、その専有部分が周囲に悪影響を及ぼしている場合に、裁判所が管理人を選任して管理させる制度です。
例えば、
- ゴミ屋敷化している住戸
- 漏水を放置している住戸
- 害虫や悪臭が発生している住戸
- 窓ガラス破損や設備故障を放置している住戸
- 相続後に誰も管理していない住戸
などが対象となる可能性があります。
従来は、管理組合が改善を求めても所有者が応じなければ、問題解決が非常に困難でした。
しかし管理不全専有部分管理命令が利用されると、裁判所が選任した管理人が所有者に代わって必要な管理行為を実施できます。
つまり、「所有者はいるが、管理をしていない」というケースに対応する制度なのです。
なぜ第67条の5が追加されたのか?
なぜ、令和7年改正標準管理規約では新たに「管理不全専有部分管理命令」が追加されたのでしょうか。
深刻化する放置住戸問題
近年、多くのマンションで次のような問題が増加しています。
- 高齢化による管理放棄
- 相続後の放置
- 遠方居住による無関心
- 認知症等による管理不能
所有者が判明していても、実際には管理が行われないケースが増えているのです。
その結果、
- 漏水被害
- 悪臭発生
- 害虫発生
- 防犯上の危険
- 建物劣化の加速
といった問題が発生し、他の区分所有者へ被害が及びます。
従来制度では対応に限界があった
従来の管理組合は、
- 注意文書を送る
- 理事会で指導する
- 訴訟を提起する
といった対応しかできませんでした。
しかも、所有者が対応しなければ解決まで長期間を要します。
そこで、区分所有法改正により創設されたのが管理不全専有部分管理制度です。
令和7年改正標準管理規約では、この制度を活用できるよう第67条の5が追加されました。
管理組合は何ができる?第67条の5のポイント
第67条の5が新設されたことで、管理組合は「所有者がいるのに管理が行われない住戸」に対して、一定の法的対応を取ることが可能になりました。
もっとも、管理組合が自由に住戸へ立ち入ったり、勝手にゴミを処分したりできるわけではありません。管理不全専有部分管理命令は、裁判所の関与のもとで管理人を選任し、その管理人が必要な管理や修繕を行う制度です。
管理組合ができる主なことは次のとおりです。
- 管理組合単独では住戸に立ち入れない
- 理事会決議を経て裁判所へ申立てできる
- 裁判所が選任した管理人が必要な修繕や管理を実施できる
- ゴミ屋敷対策として活用できる
この制度は、「所有者がいるから何もできない」と諦めていた管理組合にとって、新たな解決手段となる可能性があります。
ただし、申立てには管理不全の事実を示す証拠や、理事会での適切な手続きが必要になるため、日頃から記録を残しておくことが重要です。
所在等不明区分所有者との違い
多くの人が混同しやすいのが、第67条の3の「所在等不明区分所有者管理制度」との違いです。
所在不明区分所有者制度=人が見つからない問題の制度
管理不全専有部分管理制度=人はいるが管理しない問題の制度
という違いがあります。
所在等不明区分所有者
「所在等不明区分所有者」、こちらは、
- 所有者が行方不明
- 連絡先不明
- 生死不明
- 相続人不明
など、「所有者と連絡が取れない状態」を対象としています。
問題の本質は、「誰に連絡してよいか分からない」ことです。
管理不全専有部分
「管理不全専有部分」、こちらは、
- 所有者は判明している
- 連絡も取れる場合がある
にもかかわらず、
- 管理しない
- 修繕しない
- 放置している
というケースです。
すぐに裁判所へ申し立てできるわけではない
「問題住戸があるからすぐ管理命令を申し立てよう」と考えるのは早計です。
裁判所に申し立てるには、
- 管理不全状態であること
- 他住戸へ悪影響があること
- 必要性が高いこと
を示す証拠が必要になります。
証拠の収集が重要
管理組合は日頃から、
- 写真
- 動画
- 記録
- 苦情記録
- 点検報告書
- 理事会議事録
などを整理しておくことが重要です。
証拠が不足すると申立てが認められない可能性があります。
管理会社との連携
異常を最初に把握するのは管理会社であることが少なくありません。
そのため、
- 定期点検結果
- 苦情情報
- 巡回記録
を管理会社と共有する体制を整えることが重要です。
管理組合が注意すべきポイント
管理組合が注意すべきポイントは、以下の通りです。
感情論で進めない
問題住戸があると、「迷惑だから何とかしてほしい」という感情が先行しがちです。
しかし裁判所が判断するのは、客観的な管理不全の有無です。住民感情だけでは認められません。
管理費滞納とは別問題
管理費を滞納している住戸が必ずしも管理不全とは限りません。逆に、管理費を支払っていても管理不全状態である場合があります。
制度の対象となるかは、専有部分の管理状況によって判断されます。管理費滞納と混同しないことです。
費用負担も検討が必要
申立てには、
- 弁護士費用
- 裁判所費用
- 専門家費用
などが発生する場合があります。
理事会だけで判断せず、総会での説明や合意形成も重要になります。
よくある質問
管理不全専有部分に関するよくある質問です。
ゴミ屋敷でも管理不全専有部分管理命令の対象になりますか?
→悪臭や害虫発生など、他の区分所有者へ悪影響を及ぼしている場合は対象となる可能性があります。
管理費滞納だけで申立てできますか?
→できません。管理不全状態が必要です。
誰が申立てを行うのですか?
→標準管理規約第67条の5では、理事長が理事会決議を経て申立てを行います。
管理人の費用は誰が負担するのですか?
→ケースによって異なります。裁判所の判断や管理対象財産の状況によって決まるため、申立て前に弁護士等へ相談することが重要です。
まとめ
第67条の5(管理不全専有部分管理命令)は、令和7年改正標準管理規約で新設された重要な制度です。
ゴミ屋敷や漏水放置、長期間管理されていない住戸など、「所有者はいるが管理されていない」という問題に対し、管理組合が裁判所を通じて対応できる道が開かれました。
もっとも、申立てには理事会決議や証拠収集が必要であり、感情論だけでは認められません。
問題住戸が発生してから慌てるのではなく、日頃から記録を残し、管理会社や専門家と連携できる体制を整えておくことが重要です。
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