所有者不明で修繕できない?第67条の3新設の衝撃!

「所有者と連絡が取れない住戸があります。」
もし理事会でこんな報告を受けたら、あなたはどう対応しますか?
相続が放置されたままの部屋、郵便物が返送され続ける住戸、誰が所有者なのか分からない専有部分――。実はこうした「所在等不明区分所有者」は全国のマンションで増加しています。
いわゆる「所有者不明マンション問題」です。
問題は、単に連絡が取れないだけではありません。大規模修繕や規約改正など、マンションの重要な決議が進まなくなる恐れがあるのです。
こうした深刻な問題に対応するため、令和7年改正標準管理規約では新たに第67条の3が追加されました。
なぜ今この制度が必要になったのでしょうか。そして管理組合はどのように対応すべきなのでしょうか。改正の背景と実務上のポイントを分かりやすく解説します。
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- 所在等不明区分所有者の意味
- 第67条の3新設の背景
- 改正前との違い
- 除外制度の利用条件
- 管理組合の実務上の注意点
■ 目次 ■
令和7年改正標準管理規約 第67条の3とは?所在等不明区分所有者除外制度を解説

マンション管理組合にとって、所有者と連絡が取れない区分所有者の存在は大きな課題です。
これまで、所在不明の区分所有者は議決権総数に含まれるため、総会決議の大きな障害となることがありました。
第67条の3の新設によって、一定の条件のもとで裁判所に除外を求めることが可能になったのです。
相続が発生したまま名義変更されていない住戸や、所有者が転居して所在が分からなくなった住戸が増加しており、総会運営にも支障が生じるケースが見られるようになりました。
こうした問題に対応するため、令和7年改正標準管理規約では新たに第67条の3「所在等不明区分所有者の総会の決議等からの除外」が追加されました。
今回は、この新制度の内容や導入された背景、従来の取り扱いとの違い、そして管理組合が注意すべきポイントについて解説します。
所在等不明区分所有者とは
標準管理規約第67条の3では、「所在等不明区分所有者」という言葉が使われています。
(所在等不明区分所有者の総会の決議等からの除外)
第67条の3 理事長は、ある専有部分の区分所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、理事会の決議を経て、裁判所に対し、その区分所有者(以下「所在等不明区分所有者」という。)以外の区分所有者により総会の決議を行うことができる旨の裁判(以下「所在等不明区分所有者の除外の裁判」という。)を請求することができる。
これは、
- 区分所有者が誰なのか分からない場合
- 区分所有者は分かっているが住所や居所が分からない場合
を指します。
例えば、所有者が死亡した後に相続登記が行われておらず、誰が現在の所有者なのか不明なケースがあります。
また、登記簿上の住所へ郵送しても宛先不明で返送され、電話番号も分からず連絡手段が全くないケースもあります。
このような区分所有者は、総会招集通知を送ることができず、議決権行使も期待できません。
近年は高齢化や相続放置の増加により、このような「所在等不明区分所有者」が全国的な課題となっています。
なぜ第67条の3が追加されたのか
「所有者不明の1戸が原因で、大規模修繕工事が進められない――。」
実際に全国のマンションでこうした問題が発生しており、管理組合の大きな悩みとなっています。
第67条の3の規定が追加された最大の理由は、管理組合の意思決定を円滑にするためです。
マンションでは、
- 大規模修繕工事
- 管理規約の改正
- 建替えや敷地売却
- 共用部分の改修
など、区分所有者による総会決議が必要な場面が数多くあります。
しかし、所在不明の所有者が増えると、議決権総数には含まれるにもかかわらず、議決に参加できないため、必要な賛成数を確保しにくくなります。
特に築年数の古いマンションでは、相続放置住戸が複数存在するケースも珍しくありません。
その結果、
「必要な修繕が決められない」
「耐震改修が進まない」
「管理規約の見直しができない」
という問題が発生していました。
こうした状況を改善するため、区分所有法の改正により整備された所有者不明住戸への対応制度を踏まえ、標準管理規約にもその活用を明確化する規定として第67条の3が追加されたのです。
今までの取り扱いはどうだったのか
改正前も、所在不明所有者に関する制度が全くなかったわけではありません。
【改正前の例】
所在不明者:30
連絡可能な区分所有者:70
70人全員が賛成
↓
特別決議に必要な賛成数:75 (100×3/4)
賛成数:70
↓
連絡可能な全員が賛成しても、特別決議が成立しない場合がありました。
管理組合は、
- 登記簿の調査
- 住民票の調査
- 相続人調査
- 公示送達
などを行いながら総会運営を行っていました。
しかし、所在不明者の議決権そのものを除外する制度は一般的ではなく、多くの場合は議決権総数に含まれたままでした。
そのため、総議決権数100のマンションで10戸が所在不明であっても、賛成数の計算は100を基準に行う必要がありました。
結果として、実際には連絡可能な90戸全員が賛成しても、特別決議の成立が難しくなるケースがありました。
今回の制度では、裁判所の判断を経ることで所在等不明区分所有者を決議の母数から除外できるようになります。
つまり、実態に即した意思決定が可能になるということです。ただし、管理組合が勝手に除外できるわけではなく、必ず裁判所の手続きを経る必要があります。
管理組合として気を付けなければならないこと
第67条の3は非常に便利な制度ですが、安易に利用できるものではありません。
まず重要なのは、本当に所在不明なのかを十分に調査することです。
郵便が一度返送された程度では、「所在不明」と認められない可能性があります。管理組合としては、
- 登記事項証明書の確認
- 住民票や戸籍の追跡
- 相続人調査
- 管理費等請求時の連絡履歴確認
などを行い、所有者探索の努力を尽くしたことを証明できるようにしておく必要があります。
また、第67条の3では理事長が単独で請求するのではなく、「理事会決議」を経ることが条件とされています。
そのため、理事会議事録には、
- 所在不明と判断した理由
- 実施した調査内容
- 裁判所への申立てを行う必要性
を明確に記録しておくことが重要です。
さらに、除外制度は総会運営を円滑にするための制度であり、特定の区分所有者を排除するための制度ではありません。
手続きの透明性や公平性を確保しながら運用することが求められます。
なお、裁判所へ申立てを行う際には、所在不明であることを裏付ける資料の提出が求められるため、日頃から郵便物の返送記録や調査経過を保管しておくことも大切です。
まとめ
第67条の3の新設によって、管理組合は「所有者不明だから何も決められない」という状態から一歩前進できるようになりました。
しかし、この制度は裁判所の関与を前提とした例外的な仕組みです。あなたのマンションでは、所在不明区分所有者の実態を把握できていますか。
今回の改正を機に、組合員名簿や所有者情報の管理体制を見直し、所有者不明マンション問題を未然に防ぐ取り組みを進めてみてはいかがでしょうか。
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