【令和7年改正】マンション管理組合の委任状・議決権行使書保存義務とは?保管期間と注意点を解説

総会が終わった後、議決権行使書や委任状を「もう不要な書類」として処分していませんか。
実は、令和7年改正標準管理規約では、総会資料の保存ルールに関する考え方が大きく見直されました。
今回の改正では、理事長が保管すべき資料として、議決権行使書や代理権を証する書面(委任状等)が新たに明記されています。
結論からいうと、令和7年改正標準管理規約では、議決権行使書や委任状も理事長が保管すべき付随資料として明確化されました。
なぜ今になって、このような書類の保存が重要視されたのでしょうか。
その背景には、総会決議の有効性を巡るトラブルや訴訟の増加があります。もし必要な書類が残っていなければ、管理組合が決議の正当性を証明できなくなる可能性もあります。
今回の改正で何が変わったのか。どの書類を保存しなければならないのか。そして管理組合が実務上どのような対応を取るべきなのかを詳しく解説します。
- 総会通知の「議案の要領」とは?
■ 目次 ■
令和7年改正標準管理規約 第49条の2コメント改正で何が変わったのか

令和7年改正標準管理規約では、第49条の2(総会資料の保管等)のコメントにおいて、理事長が保管すべき「付随する資料」の範囲が明確化されました。
■改正前
【コメント】第49条の2関係
理事長が保管すべき付随する資料とは、第48条において議決事項として掲げる書類の案のほか、参考資料として総会において配布された資料等が該当する。
■改正後
【コメント】第49条の2関係
理事長が保管すべき付随する資料とは、第48条において議決事項として掲げる書類の案のほか、参考資料として総会において配布された資料、第46条第4項に基づき組合員が書面により議決権を行使した際の書面、同条第6項に基づき提出された代理権を証する書面等が該当する。
改正前は、
- 総会議案書
- 議決事項の案
- 総会で配布した参考資料
などが例示されていました。
これに対し改正後は、これらに加えて、
- 第46条第4項に基づく「書面による議決権行使書」
- 第46条第6項に基づく「代理権を証する書面(委任状等)」
も保管対象であることが明記されました。
つまり、「総会でどのような決議が行われたか」だけでなく、「誰がどのような権限で議決権を行使したのか」を後日検証できる資料まで、管理組合が保存しなければならないという考え方が明確になったのです。
保存対象となる議決権行使書・委任状とは
具体的にどんな書面が該当するのでしょうか。
書面による議決権行使書
最も典型的なのが、総会に出席できない区分所有者が提出する議決権行使書です。
例えば、
- 第1号議案 賛成
- 第2号議案 反対
- 第3号議案 賛成
などと記載して提出する書面です。
総会当日に本人が出席していなくても、この書面によって議決権を行使したことになります。
従来も多くの管理組合では保管していましたが、明文上は「付随資料」として明確ではありませんでした。
今回の改正により、「議決結果の根拠資料」として正式に保存対象であることが明示されました。
委任状(代理権を証する書面)
次に重要なのが委任状です。
例えば、「私は○○号室の△△を代理人として選任し、総会の議決権行使を委任します。」という書面です。
総会では、
- 家族への委任
- 他の区分所有者への委任
- 理事長への委任
などが頻繁に行われます。
しかし後日、
「この委任状は本物だったのか」
「本人の意思だったのか」
「代理人資格はあったのか」
という争いになるケースがあります。
そのため、委任状は総会決議の有効性を裏付ける極めて重要な証拠資料になります。
総会で配布された参考資料
改正前から対象となっていた資料です。
例えば、
- 長期修繕計画案
- 修繕工事の見積比較表
- 管理会社変更提案資料
- 大規模修繕のコンサル報告書
- 財務分析資料
などです。
議事録だけでは議案の内容や審議の前提が分からないため、これらも保存対象になります。
なぜ今回追記されたのか
なぜ今回、第49条の2関係のコメントに議決権行使書や委任状が追加されたのでしょうか。
その背景には、総会決議の有効性を巡る紛争の増加や、区分所有法改正による意思決定手続の見直しがあります。
総会決議を巡るトラブルの増加
近年のマンション管理では、
- 大規模修繕
- 管理会社変更
- 建替え
- 敷地売却
- 修繕積立金値上げ
など、利害が大きく対立する案件が増えています。
その結果、「総会決議は本当に成立していたのか」という争いが増加しています。議事録だけ残していても、
- 誰が出席したのか
- 誰が委任したのか
- 誰が書面投票したのか
が検証できません。
そこで決議の正当性を証明する資料の保存を明確化したと考えられます。
区分所有法改正との整合
また、令和7年改正区分所有法では、総会手続や電磁的方法の活用など、マンションの意思決定に関するルールが見直されています。
こうした法改正の流れの中で、議決権行使の経過を確認できる資料の保存がこれまで以上に重要になっているのです。
総会決議の適法性が問題となった場合、議事録だけでなく、誰がどのような方法で議決権を行使したのかを確認できる資料の保存が不可欠です。
今回のコメント追記は、そのような法改正の流れを踏まえたものと考えられます。
そのため、「誰がどのように議決権を行使したのか」を客観的に確認できる資料の重要性が従来以上に高まったのです。
電子化への対応
今回の改正では電磁的方法による管理も強く意識されています。
紙だけでなく、
- PDF化された議決権行使書
- 電子委任状
- 電子投票記録
なども今後増えていきます。
そのため、「何を保存対象とするのか」を明確にする必要があったと考えられます。
管理組合が気を付けるべきポイント
捨ててはいけない
最も重要なのは、「総会が終わったから処分する」という運用をしないことです。
特に役員改選などで理事長が交代する場合は、議事録だけでなく議決権行使書や委任状も確実に引き継ぐことが重要です。
特に、
- 議決権行使書
- 委任状
は総会成立を裏付ける証拠です。
後日、決議取消訴訟や無効確認訴訟になった場合の重要証拠となります。
議事録だけでは不十分
従来は、「議事録が残っているから大丈夫」と考える管理組合も少なくありませんでした。
しかし、
「出席者数が正しかったのか」
「委任状の数が合っていたのか」
までは議事録だけでは検証できません。
今回の改正は、その認識を改める趣旨ともいえます。
個人情報管理を徹底する
議決権行使書や委任状には、本人の署名や押印が含まれることも多く、管理会社へ保管を委託する場合も適切な情報管理体制が求められます。
議決権行使書や委任状には、
- 氏名
- 部屋番号
- 住所
- 押印
- 電子署名
などが記載されます。
したがって保存義務と同時に、個人情報保護も重要になります。閲覧請求に応じる場合も、
- 必要部分のみ開示する
- マスキングする
- 閲覧方法を制限する
などの配慮が必要です。
電子保存ルールを整備する
今後は、
- PDF保存
- クラウド保存
- 管理会社システム保存
が増えていきます。
その際、
- 誰がアクセスできるか
- 何年間保存するか
- バックアップをどうするか
を理事会で決めておくべきです。
電子データが消失すると、決議の証拠自体が失われる危険があります。
議決権行使書や委任状は何年保存すべきか
標準管理規約第49条の2では、議事録及び付随資料について理事長が保管することとされています。
しかし、具体的な保存期間については管理規約や文書保管規程で定めておくことが望ましいでしょう。
紙媒体で提出された議決権行使書や委任状については、原本を保管する方法のほか、電子化して保存する方法も考えられます。
ただし、電子化する場合は、管理規約や文書保管規程との整合性を確認し、原本の取扱いについても理事会で整理しておくことが望ましいでしょう。
標準管理規約に明確な保存期間規定はありませんので、各々のマンション又は管理会社の文書保管規程で定めることが望ましいと言えます。
特に大規模修繕工事や管理会社変更など、後日紛争となる可能性がある案件については、議決権行使書や委任状を長期間保存しておくことが望ましいでしょう。
管理会社が文書保管規程で保存期間を定めている場合は、その内容も確認しておくとよいでしょう。
まとめ
今回の第49条の2コメント追記は、単なる文言整理ではありません。
本質的には、「総会決議の適法性を後日検証できるようにするため、議決権行使書や委任状も正式な保存資料であることを明確化した改正」と理解すべきです。
管理組合は今後、
- 議案書
- 配布資料
- 議決権行使書
- 委任状
- 電子投票記録
を一体的に保管する体制を整える必要があります。
議決権行使書や委任状について、法律上の保存期間が定められたわけではありません。
しかし、令和7年改正標準管理規約では理事長が保管すべき付随資料として明確に位置付けられました。
特に大規模修繕、管理会社変更、修繕積立金の値上げなど利害が対立しやすい議案では、議決権行使書や委任状が総会決議の有効性を証明する重要な証拠になります。
今後は議事録だけでなく、総会の意思決定過程を裏付ける関連資料も含めて適切に保存することが、管理組合運営の重要な実務といえるでしょう。
令和7年改正は、「決議した結果」だけでなく、「どのような手続で決議したのか」まで記録・保存する時代に入ったことを示しているといえるでしょう。
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