4分の3特別決議が不要に?令和7年標準管理規約改正を解説

「危険な外壁を直したいのに、総会で否決された――。」
そんなマンション管理の“行き詰まり”を変える改正が、令和7年の標準管理規約改正で行われました。
これまで、共用部分の変更や大規模復旧には「4分の3以上」の特別決議が必要でした。しかし今回、新設された第47条第4項により、一定の場合には「3分の2以上」で決議できるようになります。
外壁落下対策、バリアフリー化、災害復旧など、管理組合が抱える現実的な問題に大きな影響を与える今回の改正。
「どんな工事が対象になるのか?」
「管理組合は何を注意すべきなのか?」
実際の具体例を交えながら、分かりやすく解説します。
管理会社の説明だけで判断せず、管理組合自身が改正内容を理解することも重要になります。
- 第47条第4項新設の内容
- 4分の3から3分の2へ緩和された理由
- 瑕疵除去工事の具体例
- バリアフリー化工事の具体例
- 専有部分工事が対象になるケース
- 災害復旧工事の具体例
- 3分の2決議でも注意すべき点
- 管理組合に求められる説明責任
■ 目次 ■
4分の3特別決議から3分の2へ緩和された具体例

マンション標準管理規約の令和7年改正では、第47条(総会の会議及び議事)に、第4項が追加されました。
第47条(総会の会議及び議事)
4 次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前3項にかかわらず、組合員総数の過半数であって議決権総数の過半数を有する組合員の出席を要し、出席組合員及びその議決権の各3分の2以上で決する。
一 敷地及び共用部分等の変更のうち、次に掲げるもの
イ 敷地及び共用部分等の設置又は保存に瑕疵があることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合におけるその瑕疵の除去に関して必要となるもの
ロ 高齢者、障害者等の移動又は施設の利用に係る身体の負担を軽減することにより、その移動又は施設の利用上の利便性及び安全性を向上させるために必要となるもの
二 前号の敷地及び共用部分等の変更に伴って必要となる専有部分の保存行為等
三 建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
これまで、共用部分の変更や大規模な復旧工事は、原則として「区分所有者及び議決権の各4分の3以上」の特別決議が必要でした。
しかし今回の改正では、一定の場合に限り、要件が「各3分の2以上」に緩和されました。
これは単なる多数決ルールの変更ではありません。
近年増えている「老朽化」「バリアフリー化」「安全対策の遅れ」などに対し、必要な工事が“賛成不足で止まってしまう問題”を解消するための改正です。
ここでは、どのような場合に「4分の3」から「3分の2」へ緩和されるのか、具体例を交えながら分かりやすく解説します。
なぜ「4分の3」では問題だったのか
マンションでは、共用部分を変更する場合、区分所有法第17条に基づき、「区分所有者数及び議決権の各4分の3以上」という特別決議が必要になります。
しかし実務では、
- 高齢化による無関心
- 相続未了住戸
- 賃貸化による総会欠席
- 空室増加
- 意見対立
などにより、必要な工事でも賛成が集まらないケースが増えていました。
特に問題だったのは、「危険なのに工事できない」という状態です。
たとえば外壁落下の危険があっても、「4分の3」に届かず工事できない。
段差解消が必要でも、一部反対で否決される。こうした社会問題を背景として、一定の公益性・必要性が高い工事について、決議要件が緩和されることになりました。
3分の2特別決議になる瑕疵除去工事
まず対象となるのが、「設置又は保存の瑕疵によって他人の権利や利益が侵害される場合」です。簡単に言えば、「危険だから直さないといけない工事」です。
具体例①:外壁タイル落下の危険
例えば、
- 外壁タイルが浮いている
- コンクリート片が落下している
- 鉄部腐食で部材が落下しそう
という状況です。
もし通行人に当たれば、管理組合が損害賠償責任を負う可能性があります。このような場合、従来は4分の3特別決議が必要でした。
しかし今回の改正後は、
- 組合員総数の過半数出席
- 出席者と議決権の各3分の2以上
で決議可能になります。
具体例②:漏水による近隣被害
共用配管の破損により、
- 下階漏水
- 隣接建物への被害
- 電気設備ショート
などが起きるケースも該当する可能性があります。
単なる修繕ではなく、「第三者被害を防ぐ必要性」が重要ポイントになります。
3分の2特別決議になるバリアフリー化工事
次に対象となるのが、「高齢者、障害者等の移動負担を軽減する工事」です。これは近年特に重要視されています。
具体例①:スロープ設置
エントランス部分に階段しかないマンションで、
- 車椅子利用者
- ベビーカー利用者
- 高齢者
が困っている場合があります。
このとき、
- スロープ新設
- 手すり追加
などの工事が対象になります。
具体例②:段差解消工事
共用廊下やエントランスに大きな段差があり、転倒事故リスクがあるケースです。こうした工事も、一定条件下で3分の2決議となります。
具体例③:エレベーター関連改修
古いマンションでは、
- エレベーター停止階不足
- 車椅子非対応
- 開口幅不足
などの問題があります。
高齢者対応として必要性が高い場合、対象になる可能性があります。
専有部分への立入りや工事
第2号では、「共用部分変更に伴い必要となる専有部分工事」も対象になります。
具体例①:配管更新工事
共用立て管更新のため、各住戸内部に入って工事を行うケースがあります。従来は、「専有部分に関係する」ということで強い反対が出やすい分野でした。
しかし老朽化配管を放置すると、
- 漏水事故
- 建物損傷
- 保険問題
につながります。
そのため必要性の高い工事として緩和対象になりました。
具体例②:バリアフリー工事に伴う玄関改修
共用廊下側スロープ設置に伴い、住戸玄関部分の調整が必要になる場合があります。こうした関連工事も含まれます。
3分の2特別決議になる災害復旧工事
第3号は、「建物価格の2分の1超が滅失した場合の復旧」です。これは大地震や火災を想定しています。
具体例①:大地震で共用部分が半壊
例えば、
- 柱損傷
- 共用廊下崩落
- エレベーター停止
- 配管破断
などで大規模復旧が必要になるケースです。
災害後は迅速な復旧が必要ですが、4分の3特別決議では時間がかかる問題がありました。そのため復旧を進めやすくする目的で緩和されています。
今回の改正で管理組合が意識すべきこと
今回の改正で、マンション管理組合が意識しておかなければならないことは、次の通りです。
何でも3分の2ではない
今回の改正で管理組合が意識すべきことは、「緩和された=何でも3分の2」ではないということです。
対象になるのは、
- 安全性
- 公益性
- 必要性
が高い工事だけです。
通常のリフォーム的変更、
- デザイン変更
- グレードアップ
- 美観向上
などは、従来どおり4分の3特別決議が必要になる可能性があります。
「説明責任」がさらに重要になる
決議要件が緩和されたことで、反対者から「本当に対象工事なのか」と争われる可能性があります。
そのため管理組合は、
- 劣化診断報告書
- 危険性資料
- 専門家意見
- バリアフリー必要性
- 法的根拠
などを整理しておくことが重要になります。
専門家活用が重要になる
今後は、
- マンション管理士
- 建築士
- 弁護士
- 設備専門家
などとの連携がより重要になります。
後から「この工事は本当に3分の2決議で良かったのか」と争われ、決議無効を主張される可能性もあります。
まとめ
今回の第47条4項新設は、「マンションの安全性・継続性を守るための改正」と言えます。
特に、
- 老朽化
- 高齢化
- 災害対応
という現代マンションの課題を強く意識した内容です。
一方で、「3分の2で決められる」という影響は非常に大きいため、
- 対象工事の該当性
- 丁寧な説明
- 合意形成
- 専門家確認
はこれまで以上に重要になります。
今後のマンション管理では、「決議を通すこと」だけではなく、「納得感を持って進めること」がさらに求められる時代になりそうです。
つまり今回の改正は、「必要な工事を進めやすくする一方で、管理組合の説明責任はさらに重くなる改正」と言えます。
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