「形状又は効用の著しい変更とは?普通決議・特別決議の違いを解説」

「共用部分の変更は特別決議が必要です。」
マンション管理士試験や管理組合の実務でよく目にするルールですが、標準管理規約第47条を読むと、多くの人がある言葉で立ち止まります。
それが、「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。」という一文です。
「除くということは普通決議なの?」
「どこからが“著しい変更”になるの?」
「エレベーターの更新や駐車場の新設はどちらに該当するの?」
実は、この規定はマンション管理士試験でも繰り返し出題される重要論点であり、意味を正しく理解していないと問題文に惑わされてしまいます。
実はこの規定は区分所有法第17条に由来しており、共用部分の変更に関する普通決議と特別決議を理解する上で欠かせない重要論点です。
この記事では、「形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く」の意味を分かりやすく解説するとともに、普通決議と特別決議の具体例、判断のポイント、さらに過去の試験問題まで紹介します。この記事を読めば、ややこしい決議要件の違いがスッキリ理解できるはずです。
~ この記事で分かること ~
- 条文の意味が分かる
- 普通決議との違い
- 特別決議の判断基準
- 具体例で理解できる
- 過去問対策ができる
■ 目次 ■
「形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く」とは?

マンション標準管理規約第47条第3項第2号には、「敷地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)」という一文があります。
第47条 総会の会議は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。
2 総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。
3 次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。
一 規約の制定、変更又は廃止
二 敷地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)
三 区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項の訴えの提起
四 建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
五 その他総会において本項の方法により決議することとした事項
4 建替え決議は、第2項にかかわらず、組合員総数の5分の4以上及び議決権総数の5分の4以上で行う。
管理組合の役員や区分所有者の中には、
「結局、普通決議なのか特別決議なのか分からない」
「“除く”という表現が回りくどい」
と感じる方も少なくありません。
実は、この規定は区分所有法第17条の考え方をそのまま取り入れたものであり、「著しい変更かどうか」で決議要件が変わることを意味しています。
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なぜ著しい変更がないと普通決議になるのか
区分所有法では、共用部分の変更であっても建物の形状や利用目的に大きな影響を与えない場合は、区分所有者全員の権利関係に与える影響が比較的小さいと考えられています。
そのため、エレベーターや給水ポンプの更新のような維持管理や性能向上を目的とした工事は、区分所有者及び議決権の過半数による普通決議で実施できるとされています。
一方で、増築や用途変更など建物の価値や利用方法に大きな影響を与える工事については、区分所有者の権利保護の観点から特別決議が必要になります。
「形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く」の意味
この条文を分かりやすく言い換えると、「共用部分の変更のうち、重大な変更だけは特別決議とする」という意味です。
つまり、
- 著しい変更がある → 特別決議
- 著しい変更がない → 普通決議
となります。

条文は、「著しい変更を伴わないものを除く」と書かれているため分かりにくいですが、裏を返せば、「著しい変更を伴うものだけが第47条第3項の対象」ということです。
したがって、軽微な変更や改良工事は第3項の対象外となり、第2項の普通決議で足ります。
判断のポイントは「形状」と「効用」
区分所有法第17条の解説や標準管理規約コメントでは、
形状
「形状」とは、建物や敷地の物理的な姿や構造。例えば、
- 建物を増築する
- 共用廊下を拡張する
- 駐車場を新設する
効用
「効用」とは、利用目的や機能。例えば、
- 集会室を駐輪場に変更する
- 倉庫を管理員室に変更する
- 緑地を駐車場に変更する
という考え方が示されています。
つまり、
「見た目や構造が大きく変わるか」
「使い方や機能が大きく変わるか」
を判断すればよいのです。
普通決議になる例
著しい変更を伴わない場合は普通決議です。
エレベーターの更新
古いエレベーターを最新型へ交換する。性能向上はあっても利用目的は変わらないため、通常は普通決議です。
オートロック設備の更新
老朽化した設備を新しいものへ交換する。防犯性能が向上しても用途は同じです。
LED照明への交換
共用廊下やエントランス照明をLED化する。省エネ化であり、形状や効用の著しい変更とはいえません。
防犯カメラの更新
既存設備の改良・更新であるため、一般的には普通決議となります。
大規模修繕工事
外壁補修や防水工事など、建物を維持するための工事は修繕に該当し、通常は普通決議です。
インターホン更新
老朽化したインターホンを最新型へ交換する工事です。録画機能やモニター機能が追加されても基本的な用途は変わらないため、通常は普通決議となります。
宅配ボックス更新
故障や老朽化により既存の宅配ボックスを新しいものへ交換する工事です。利便性は向上しますが利用目的は同じであるため、一般的には普通決議となります。
給水ポンプ更新
経年劣化した給水ポンプを省エネ型や高効率型へ交換する工事です。設備性能は向上しても建物の形状や利用目的は変わらないため、通常は普通決議です。
特別決議になる例
次のようなケースは形状又は効用の著しい変更に該当する可能性があります。
駐車場の新設
敷地内に新たな駐車場を設置する。敷地の利用方法が大きく変わります。
建物の増築
集会室や管理員室を増築する。建物の形状そのものが変化します。
集会室を駐輪場へ変更
用途が大きく変わるため、効用の著しい変更に該当します。
屋上に携帯電話基地局を設置する
建物の利用形態が大きく変化する場合があります。
緑地を駐車場へ転用
敷地利用の目的が大きく変更されるため、特別決議が必要になる可能性があります。
機械式駐車場を平面駐車場へ変更
老朽化した機械式駐車場を撤去し、平面駐車場へ変更する工事です。駐車場の構造や利用形態が大きく変わるため、形状又は効用の著しい変更に該当する可能性があります。
共用庭園を駐車場へ変更
住民の憩いの場である共用庭園を廃止し、駐車場として利用するケースです。敷地の用途そのものが変わるため、効用の著しい変更に該当します。
集会室をコワーキングスペースへ変更
総会や理事会で利用していた集会室を、住民向けのコワーキングスペースへ改装するケースです。利用目的が大きく変わるため、効用の著しい変更に該当する可能性があります。
迷ったときの判断方法
実務上は次の3つを確認すると分かりやすくなります。
修繕か変更か
まず、
- 元の状態に戻す
- 同等機能に更新する
のであれば修繕です。
修繕なら普通決議となる場合がほとんどです。
利用目的が変わるか
集会室を駐輪場にするなど、用途が変わる場合は要注意です。効用の著しい変更に該当する可能性があります。
見た目や構造が大きく変わるか
増築や大規模な改造工事であれば、形状の著しい変更と判断される可能性が高くなります。
「マンション管理士試験での覚え方」
- 「著しい変更あり=特別決議(4分の3)」
- 「著しい変更なし=普通決議(過半数)」
と覚えておくと、マンション管理士試験や管理業務主任者試験でも役に立つでしょう。
令和7年標準管理規約改正により、「老朽化」「バリアフリー化」「安全対策の遅れ」に対する決議は、4分の3から3分の2に緩和されました。マンションの安全性・継続性を守るための改正だと言えます。
改正点は、試験で問われやすいので、整理して覚えておくことをおすすめします。
区分所有法第17条との関係
標準管理規約第47条第3項第2号は、区分所有法第17条の「共用部分の変更」に関するルールを反映した規定です。
区分所有法第17条では、共用部分の変更は区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による決議が必要とされています。
ただし、「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」については過半数決議で足りるとされており、標準管理規約も同じ考え方を採用しています。
そのため、試験では標準管理規約だけでなく、区分所有法第17条とセットで理解しておくことが重要です。
マンション管理士試験の過去問で確認しよう
この論点は繰り返し出題されています。
令和6年度マンション管理士試験 問6
共用部分の変更のうち、「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」の決議要件を問う問題です。「形状又は効用の著しい変更を伴わない」=普通決議となります。
【問題】次の集会の議事のうち、区分所有法の規定によれば、区分所有者及び議決権の各過半数で決することができるものの組合せとして正しいものはどれか。
ア 形状又は効用の著しい変更を伴わない共用部分の変更
イ 規約に別段の定めがない共用部分の管理
ウ 規約で決議に必要な議決権を過半数と定めた場合の共用部分の形状又は効用の著しい変更
エ 建物の滅失部分の価格の割合が2分の1を超える場合の共用部分の復旧
1 アとイ
2 イとウ
3 ウとエ
4 エとア
【正解】1
令和5年度マンション管理士試験 問3
共用部分の変更について、4分の3決議が必要となる場面を問う問題です。「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」=普通決議から「を除く。」=特別決議(全体-普通決議)となります。
【問題】共用部分等の管理及び変更に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。ただし、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすことはないものとする。
ア 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、集会において区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数の決議で決するが、区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
イ 共用部分の管理に関する事項は、共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)の場合を除いて、集会における区分所有者及び議決権の各過半数の決議で決するが、規約において、集会出席者の過半数で決すると定めることもできる。
ウ 共用部分以外の附属施設で区分所有者の共有に属するもの(これに関する権利を含む。)の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、集会において区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数の決議で決するが、区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
エ 区分所有者の共有に属する建物の敷地(これに関する権利を含む。)の各共
有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、建物の敷地の負担に任じ、建物の敷地から生ずる利益を収取する。
1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
【正解】4
令和3年度マンション管理士試験 問8
共用部分の変更に関する決議要件について問う問題です。著しい変更を伴わない変更は普通決議であり、著しい変更を伴う変更は特別決議となります。
共用部分の重大変更まで過半数決議に変更できてしまうと、少数区分所有者の権利保護ができなくなるため、規約による変更は認められていません。
【問題】次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、規約で別段の定めをすることができないものはどれか。
1 各区分所有者による共用部分の保存行為について、管理者を通じて行うこと。
2 共用部分の変更についての決議要件を、その変更の内容が軽微なものか重大なものかにかかわらず、区分所有者及び議決権の各過半数に減ずること。
3 各住戸の面積等の差が軽微な場合において、共用部分の負担と収益の配分を、住戸数を基準に按分すること。
4 一部共用部分について、これを共用すべき区分所有者の共有とするのではなく、区分所有者全員の共有とすること。
【正解】2
まとめ
標準管理規約第47条第3項第2号の「形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く」とは、「軽微な変更は普通決議、重大な変更だけ特別決議にする」という意味です。
覚え方は非常にシンプルです。
- 修繕・更新・改良 → 普通決議
- 増築・用途変更・大規模改造 → 特別決議
試験では、
「著しい変更あり=4分の3以上の特別決議」
「著しい変更なし=過半数の普通決議」
という対比で出題されることが多いため、このセットで覚えておくと得点しやすくなります。
「著しい変更」という表現に惑わされがちですが、試験でも実務でも重要なのは『建物の形や使い方が大きく変わるか』という視点です。
迷ったときは、『修繕・更新なら普通決議、用途変更や増築なら特別決議』を基準に判断すると理解しやすくなります。
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