標準管理規約第23条改正 漏水時の専有部分立ち入り対応とは?

「上階から漏水しています。しかし、所有者と連絡が取れません――。」
もし、深夜にこんな連絡が入ったら、管理組合はどう動くべきでしょうか。
これまでのマンション管理では、「専有部分だから勝手に入れない」という考え方が一般的でした。しかし、高経年化や空き家化が進む今、その対応では被害拡大を防げないケースが増えています。
そこで今回、マンション標準管理規約第23条のコメントに、“管理組合が専有部分へ立ち入り、補修まで行うケース”が、新たに明記されました。これは単なる説明追加ではありません。マンション管理の現場に、大きな影響を与える改正と言えるでしょう。
今回の改正で誤解してはいけないのは、「管理組合が自由に専有部分へ入れるようになったわけではない」という点です。
~ この記事で分かること ~
- 第23条コメント追加の内容
- 漏水時の立入りルール
- 補修できるケースとは
- 管理組合が備えるポイント
- 管理規約見直しの注意点
■ 目次 ■
「必要箇所への立ち入り等」コメント追加

マンション標準管理規約の第23条「必要箇所への立入り等」に、新たなコメントが追加されました。
【コメント】第23 条関係
本条で想定される他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立入り又は保存行為の実施とは、ある区分所有者の専有部分内の配管から漏水が発生し、共用部分に被害が生じているような場合において、漏水発生元の専有部分に立ち入るとともに、漏水発生元の専有部分の区分所有者に代わって漏水箇所の補修を行う場合等が想定される。
今回の追加では、漏水事故などの緊急時に、管理組合が専有部分へ立ち入り、場合によっては区分所有者に代わって補修行為を行うケースが明記されています。
これは単なる“説明追加”ではありません。近年増えている高経年マンションの漏水事故や、所有者不在・連絡不能問題を背景に、管理組合が迅速に対応できるよう整理されたものです。
なぜ「必要箇所への立ち入り等」が追加?
では、なぜこのコメントが追加されたのでしょうか。そして管理組合は、今後どのように対応すべきなのでしょうか。
今回のコメント追加の背景には、マンションの高経年化があります。
築年数が古くなると、給排水管の劣化による漏水事故が増加します。特に問題になるのは、「漏水元が専有部分内」であるケースです。
例えば、
- 上階住戸の給水管から漏水
- 空室住戸で異常発生
- 所有者が海外居住
- 賃貸化され連絡がつかない
このような状況では、被害が共用部分や他住戸に拡大しても、管理組合がすぐに対応できないケースがありました。
従来の標準管理規約第23条でも、必要な立ち入りは認められていました。しかし、
「どこまでできるのか」
「補修まで可能なのか」
「本人不在でも対応できるのか」
という点が現場では曖昧だったのです。
そのため、実務上の混乱を避ける目的で、今回のコメントが追加されました。
今回のコメントで重要なのは、単なる“立ち入り”だけでなく、「保存行為」まで例示された点です。
具体的には、「漏水発生元の専有部分の区分所有者に代わって漏水箇所の補修を行う場合」が明記されました。これは非常に大きなポイントです。
つまり、
- 共用部分へ被害が及んでいる
- 緊急性が高い
- 放置すると被害拡大する
こうした場合には、管理組合側が一定の対応を取る必要性が整理されたということです。特に近年は、相続未了住戸や空き家住戸も増えています。
「所有者と連絡がつかないから何もできない」では、マンション全体の安全が守れません。
そのため、“被害拡大防止”という観点から、管理組合対応の必要性が明文化されたと考えられます。
自由に専有部分へ入れるのか?
今回のコメント追加を見て、「管理組合は自由に専有部分へ入れるのか」と誤解してはいけません。
あくまで、
- 必要性
- 緊急性
- 被害防止
が前提です。
例えば、
- 理事会が興味本位で入室
- 修繕提案営業目的
- 点検名目の過剰立ち入り
などは、当然認められません。
また、専有部分は区分所有者の財産であり、プライバシー空間でもあります。
そのため、
- 事前連絡
- 立会い
- 記録作成
- 実施範囲の限定
など、慎重な運用が求められます。
特に、緊急時以外は、できる限り所有者の承諾を得る姿勢が重要です。
今回の改正趣旨を踏まえると、管理組合は“緊急対応体制”を整備しておく必要があります。特に重要なのは、連絡不能問題への備えです。
例えば、
- 緊急連絡先の定期確認
- 賃貸住戸の入居者情報把握
- 空室住戸の管理状況確認
- 国内管理人制度の活用
などが重要になります。
また、漏水時の対応フローも明文化しておくべきでしょう。
例えば、次のような流れです。
- 漏水確認
- 被害範囲確認
- 所有者連絡
- 緊急立ち入り判断
- 応急措置実施
- 記録保存
といった流れを整理しておくことで、現場の混乱を減らせます。
今回のコメント追加を受けて、管理規約や細則を点検することも大切です。特に確認したいのは、
- 緊急立ち入り条項
- 保存行為の範囲
- 費用負担ルール
- 鍵保管ルール
- 緊急時対応細則
などです。
例えば、応急措置費用を誰が負担するのか曖昧だと、後でトラブルになります。「共用部分保護のための応急対応費は原因区分所有者負担」など、整理しておくと実務上スムーズです。
また、管理会社との役割分担も重要になります。
理事会、管理会社、設備業者の連携体制を事前に確認しておくべきでしょう。
今回のコメント追加は、単なる補足説明ではありません。実質的には、「被害拡大を防ぐため、管理組合も適切に動くべき」という方向性が強まったとも言えます。
今後は、「所有者と連絡がつかないから放置した」だけでは済まされない場面も増えるかもしれません。
高経年化、空き家化、所有者不明化が進む時代だからこそ、マンション管理には“平時の備え”が求められています。
第23条改正で管理組合に求められること
今回の第23条コメント追加は、その現実を反映した改正と言えるでしょう。
特に今後は、漏水事故発生時に「所有者と連絡が取れない」というケースがさらに増える可能性があります。
そのため管理組合には、平時からの連絡体制の整備や緊急対応ルールの明文化が求められます。
“何か起きてから考える”のではなく、“起きる前に備える”ことが、これからのマンション管理では重要になるでしょう。
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