拘禁刑と禁錮の違いとは?管理組合役員の欠格条項改正を解説

「拘禁刑以上」と「禁錮以上」。
マンション標準管理規約の改正で、この言葉が変更されたことをご存じでしょうか。
「ただの法律用語の修正でしょ?」と思うかもしれません。ですが実は、刑法改正と管理組合のガバナンス強化が背景にある重要な変更です。
特に理事長や理事、監事などの役員選任では、「誰が役員になれるのか」に直結するため、知らないままでは思わぬトラブルにつながる可能性もあります。
さらに近年は、管理組合への外部業者の入り込みや、なりすまし問題なども注目され、「役員の適格性」がこれまで以上に重視される時代になっています。
では、「拘禁刑」と「禁錮」は何が違うのでしょうか。そして、なぜ標準管理規約は再び「禁錮以上」という表現へ変更されたのでしょうか。
今回の改正内容を、管理組合実務の視点から分かりやすく解説します。
~ この記事で分かること ~
- 拘禁刑と禁錮の違い
- 規約改正のポイント
- 役員の欠格条項
- 就任できない条件
- 役員選任の注意点
- 自己申告の方法
- ガバナンス強化
- 実務への影響
■ 目次 ■
拘禁刑と禁錮の違いとは?

令和7年改正のマンション標準管理規約では、第36条の2(役員の欠格条項)の文言が変更されました。
■改正前
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
■改正後
二 拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
改正前は、「禁錮以上の刑に処せられ…」となっていましたが、改正後は、「拘禁刑以上の刑に処せられ…」へ変更されています。
一見すると、単なる言葉の修正のようにも見えます。しかし実際には、日本の刑法改正に伴う重要な法制度変更が背景にあります。
特に管理組合の理事長や理事、監事などの役員選任では、「誰を役員にできるのか」という根本部分に関わるため、改正内容を正しく理解しておく必要があります。
まず大きなポイントは、「拘禁刑」と「禁錮」は別の制度であることです。
従来の日本の刑法では、主な自由刑として次の2種類がありました。
- 懲役
- 禁錮
懲役は「刑務作業がある刑」、禁錮は「刑務作業がない刑」と区別されていました。
しかし、令和7年6月施行の改正刑法により、この区分が廃止され、新たに「拘禁刑」に一本化されました。つまり、
- 懲役 → 拘禁刑
- 禁錮 → 拘禁刑
へ統合されたのです。
拘禁刑とは?禁錮との違いを簡単解説
そのため、現在の法律では「拘禁刑」という表現が正式用語になっています。
一方、標準管理規約改正では逆に「拘禁刑以上」から「禁錮以上」へ戻る形になっているため、「なぜ逆行したのか?」と混乱しやすい部分でもあります。
今回の変更理由は、標準管理規約の整合性調整にあります。
実は、刑法改正に伴い、多くの法律や規約で「懲役」「禁錮」を「拘禁刑」へ変更する動きがありました。
その流れの中で、マンション標準管理規約でも一時的に「拘禁刑以上」という表現へ変更された経緯があります。
しかしその後、区分所有法や他の関連法令との表現整理、さらに管理実務上の分かりやすさを踏まえ、「禁錮以上」という従来型表現へ再整理されたと考えられています。
特にマンション管理の現場では、法律専門家ではない区分所有者も多く、急に「拘禁刑」と書かれても意味が伝わりにくいという実務上の問題がありました。
また、欠格条項の趣旨は「重大犯罪歴のある者を一定期間役員にしない」という点にあるため、言葉の厳密性よりも、実務上の理解しやすさが優先された側面もあります。
管理組合役員の欠格条項とは
欠格条項で重要なのは、「どのような場合に役員になれないか」です。
今回の規定では、
「禁錮以上の刑に処せられ、その執行終了又は執行免除から5年未満」である場合、役員就任ができません。
例えば、
- 詐欺事件
- 横領事件
- 背任事件
- 重大な暴行事件
- 業務上横領
などで有罪判決を受け、禁錮刑以上となった場合は対象になり得ます。
特に管理組合役員は、
- 修繕積立金管理
- 契約締結
- 個人情報管理
- 総会運営
など重要な権限を持つため、一定の信用性確保が必要とされています。そのため、「刑の終了から5年間」は役員になれない仕組みが維持されています。
管理組合役員になれないケースとは?
今回の改正で、管理組合として重要になるのは「役員選任時の確認方法」です。
もっとも、現実には管理組合が犯罪歴を自由に調査できるわけではありません。
そのため実務上は、
- 就任承諾書への確認項目追加
- 自己申告方式
- 役員候補者への事前説明
などで対応するケースが考えられます。
例えば、
「標準管理規約第36条の2に定める欠格事由に該当しません」という確認欄を設ける方法です。
特に近年は、
- 修繕委員会への外部業者関与
- なりすまし問題
- 管理費横領
- 理事会トラブル
など、管理組合のガバナンス問題が注目されています。
そのため、「誰が役員になるのか」を曖昧にしない流れが強まっています。
管理組合が役員選任で注意すること
ただし、欠格条項の運用には注意も必要です。
例えば、
「うわさ」
「過去の逮捕歴」
「不起訴」
だけで役員就任を拒否することは適切ではありません。
欠格条項はあくまで、「禁錮以上の刑に処せられた場合」が対象です。
要するに、有罪判決が確定していなければ原則として該当しません。
また、個人情報保護の観点からも、過度な確認や詮索はトラブル原因になります。
管理組合としては、
- 規約どおり公平に運用する
- 感情論で排除しない
- 確認手続を統一する
ことが重要です。
今回の第36条の2改正は、単なる文言修正に見えて、実は刑法改正とマンション管理実務の両方が関係しています。
ポイントを整理すると、
- 刑法では「懲役」「禁錮」が「拘禁刑」に統合された
- 標準管理規約では実務上の分かりやすさから「禁錮以上」へ整理された
- 欠格条項の目的は役員の信用性確保
- 管理組合は役員選任時の確認方法を整備する必要がある
という点になります。
特に今後は、管理組合にも「ガバナンス」や「透明性」が強く求められる時代です。
役員の適格性確認も、単なる形式ではなく、「安心して管理を任せられる体制づくり」の一部として考えることが重要になっていくでしょう。
今後は、マンション管理士試験や管理組合実務でも『拘禁刑』という用語を見る機会が増える可能性があります。
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