令和7年マンション標準管理規約改正 第54条 理事会だけでは危険な時代へ

「理事会で決めたから問題ないと思っていた――。」
しかし、令和7年改正のマンション標準管理規約では、その“当たり前”が大きく変わろうとしています。
今回、標準管理規約第54条(議決事項)に新たに追加された「六項・七項・八項・十三項」。
一見すると難しい条文番号ですが、実はその中身は、訴訟対応・利益相反・臨時総会・所有者不明問題など、今後のマンション管理に直結する重要事項ばかりです。
「どこまで総会決議が必要なのか?」
「理事会だけで進めると危険なのか?」
「管理組合は今後どう備えるべきなのか?」
知らないまま理事会だけで進めると、「決議無効」や「手続違反」を指摘される可能性もあります。
令和7年改正で標準管理規約に追加された第54条の新設項目について、背景から実務対応まで分かりやすく解説します。
- 第54条改正で管理組合はどう変わる?
■ 目次 ■
理事会だけで決めると危険?令和7年改正標準管理規約第54条の新ルールを解説

~ この記事で分かること ~
- 第54条改正で追加された「六・七・八・十三」の意味
- なぜ総会関与が強化されたのか
- 理事会だけで決めると危険な理由
- 管理組合が今後整備すべき実務対応
令和7年改正のマンション標準管理規約では、第54条(議決事項)に新たな項目として「六項・七項・八項・十三項」が追加されました。
第54条(議決事項)
六 第24条の2第2項、第60条第4項及び第67条第3項に定める訴訟その他法的措置の追行
七 第37条の2に定める承認又は不承認
八 第42条第4項に定める臨時総会の招集
十三 第67条の3第1項、第67条の4第1項及び第2項並びに第67条の5第1項及び第2項に定める裁判所に対する請求
つまり簡単に言うと、
- 訴訟をする時
- 利益相反がある契約を承認する時
- 緊急で臨時総会を開く時
- 所有者不明問題で裁判所を利用する時
などを、総会の重要議決事項として整理した改正です。
一見すると単なる条文整理のように見えますが、実はこの改正には重要な意味があります。
これまで理事会だけで判断されがちだった「法的措置」や「緊急対応」について、総会の意思を明確に反映させる方向へ制度が整理されたのです。
今回は、新設された各号が具体的に何を意味するのか、なぜ追加されたのか、そして管理組合は今後どう対応すべきなのかを分かりやすく解説します。
第54条とは何か?
第54条は、管理組合の「総会で決議すべき事項」を定めた条文です。
つまり、
- 何を総会で決めるべきか
- 理事会だけで決めてはいけない事項は何か
を整理している重要な規定です。
今回の改正では、新たに法的手続や緊急招集などについて、総会の関与を明確化するために項目が追加されました。
六 訴訟・滞納請求・法的措置は総会決議事項に
例えば、理事会だけで滞納者への訴訟を進めた結果、
「総会決議を経ていない」
「理事長に権限がない」
と争われ、手続が問題化するケースも考えられます。
新設された第54条六は、次の条文に関係します。
- 第24条の2第2項
- 第60条第4項
- 第67条第3項
これらは主に、
- 滞納管理費の請求
- 規約違反者への法的対応
- 区分所有法に基づく訴訟
などを指しています。
つまり、「管理組合として裁判・差止請求・強制執行などを進める場合は、総会の意思決定事項である」ことを明確化したものです。
今回の改正は、標準管理規約で定める一定の法的措置について総会の意思決定事項として明確化したものであり、すべての訴訟行為を新たに総会決議必須としたものではありません。
なぜ追加されたのか
従来は、「理事長が勝手に訴訟を起こした」「理事会だけで法的措置を進めた」など、権限範囲が曖昧になるケースがありました。
法的措置には、
- 弁護士費用
- 訴訟リスク
- 管理組合全体への影響
があるため、本来は区分所有者全体の意思確認が重要です。
そのため、「法的措置は総会で決めるべき事項」として整理されたのです。
管理組合はどうすれば良いのか
今後は、
- 滞納訴訟
- 使用禁止請求
- 差止請求
などを行う場合、総会議案として上程する流れを確認しておく必要があります。
また、管理規約や細則に、
- 訴訟提起の手続
- 理事会への委任範囲
を整理しておくことも重要になります。
七 利益相反取引は総会チェック対象に
第37条の2は、「利益相反取引」について総会がチェックする制度です。
例えば、
- 理事本人の会社へ工事発注
- 理事の親族企業との契約
- 管理会社との特別な利害関係
などが該当します。
つまり、「役員個人の利益と管理組合利益が衝突する取引」を総会がチェックする仕組みです。
なぜ追加されたのか
近年、
- 修繕工事談合
- 管理会社との癒着
- 外部専門家との利益相反
などの問題が社会的に注目されました。特に大規模修繕では、多額の工事費が動きます。
そのため、「理事会内部だけでは不透明になる恐れ」があり、総会の監視機能を強化する必要が生じました。
管理組合はどうすれば良いのか
今後は、
- 役員関連会社との契約
- 利害関係の有無
を事前確認する体制が重要になります。
議案書にも、
- どのような関係があるのか
- なぜ必要な契約なのか
を明記し、透明性を高めることが求められます。
八 臨時総会招集ルールも重要議決事項に
臨時総会の招集ルールとは、具体的に何を指すのでしょうか。
第42条第4項は、一定の場合に理事長が臨時総会を招集する規定です。
第42条第4項は、理事長が招集しない場合などにおいて、一定の手続を経て区分所有者が臨時総会を招集できる制度です。
例えば、
- 理事長が招集しない
- 理事会機能が停止した
- 緊急議題が発生した
などの場合です。
なぜ追加されたのか
近年は、
- 理事会対立
- 理事長の独断
- 管理不全マンション
などの問題が増えています。
その結果、「必要な総会が開けない」ケースも実際に発生しています。
そのため、「臨時総会招集自体を重要な議決事項として整理する」必要が生じました。
管理組合はどうすれば良いのか
管理組合はどうすれば良いのでしょうか。
管理組合は、
- 緊急時の招集ルール
- 招集権者
- 通知方法
を整理しておく必要があります。
特に高齢化マンションでは、理事会機能停止リスクへの備えが重要になります。
十三 所有者不明・管理不全への裁判所対応とは
裁判所への請求とは、具体的に何を指すのでしょうか。
第67条の3~第67条の5は、
- 所在等不明区分所有者
- 管理不全専有部分管理命令
- 管理不全共用部分管理命令
- 所有者不明専有部分管理命令
などに対する裁判所手続を定めています。
例えば、
- 管理人選任
- 競売請求
- 所有者探索
- 共用部分管理命令
などです。
これは近年の区分所有法改正とも深く関係しています。
なぜ追加されたのか
現在、多くのマンションで、
- 空き家化
- 相続未了
- 所有者不明
- 管理費滞納
が深刻化しています。
従来制度では、対応が極めて困難でした。そのため、法改正により、「裁判所を活用して管理不全を解消する制度」が整備されたのです。
今回の標準管理規約改正は、それに対応した内容となっています。
管理組合はどうすれば良いのか
今後は、
- 所有者不明住戸
- 長期滞納
- 危険空室
などを放置しないことが重要です。
特に、
- 組合員名簿整備
- 相続確認
- 連絡先管理
が極めて重要になります。
また、必要に応じて、
- 弁護士
- マンション管理士
- 司法書士
など専門家と連携する体制も求められます。
今回の改正の本当の意味
今回の第54条改正は、単なる条文追加ではありません。
背景には、「管理組合のガバナンス強化」という大きな流れがあります。
つまり、
- 透明性
- 合意形成
- 法的適正手続
をより重視する方向へ進んでいるのです。
これからの管理組合には、「昔ながらの曖昧運営」ではなく、
- 記録を残す
- 総会で説明する
- 手続を明確化する
ことが求められます。
これからのマンション管理は、「理事会が頑張る時代」から、「総会で透明性を確保しながら管理する時代」へ変わりつつあります。
かつては、「理事長経験者の判断」や「慣例」で運営されるマンションも少なくありませんでした。
しかし今後は、法的根拠と透明な手続を前提に管理運営することが求められる時代へ変わりつつあります。
令和7年改正第54条は、その象徴とも言える改正なのかもしれません。
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